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2017/02/22 (Wed) 【ひめごとEND】春日局【私の思い通り】

初めましての方は初めまして。
ARUSEBU、もしくは椿と椛と言います。
2015年の11月から12月にかけて開催された私の思い通りイベント、春日局様ルートのひめごとENDになります。ではお楽しみください。




春日局「心意を聞きたい。…あなた自身の口から」
(……私の口から)

掴まれた腕が熱い。説明をしたいのに、言葉を紡ぎたいのに、上手く言葉が出てきてくれない。

春日局「怒っているわけではない。ただ…聞きたいだけだ」

春日局様の視線の先を辿ると、自分が書いた文字が視界に飛び込んできた。

『……っ……』

"…全ての任務から解放される春日局様になって欲しい"

(…これは、嘘いつわりのない私の言葉だ…)
『……この書物は、御門が術をかけた何でも書いたことが思い通りになる書物なんです』
春日局「……そうか」

春日局様は文字を一つずつ視線で追うと、ふっと息をついた。

春日局「どうして私に、任務を休ませたかった?」
(それは……)

きゅっと唇を噛み締めると親指で唇をなぞられる。

春日局「……そんなに噛むな。痕になる」
『…………』

その一言が、なんだかたまらなく胸を締め付けた。

『春日局様…私一人でも謁見をこなせましたよ』
春日局「それは、どういう意味だ…」

春日局様の真っ直ぐな問いかけに、言葉にならない気持ちが押し寄せてくる。

ーーーーーーーーーーーーーーー

春日局「この土地を治めている大名は……、椿…聞いているのか」

ーーーーーーーーーーーーーーー

『春日局様にはたくさんのことを教えていただきました』
春日局「……?」
『私が影武者になってから、月日は流れているのに。春日局様は、未だに私の教育に時間を割いてくださっている』
春日局「それは…当たり前だろう」
(当たり前にさせているのは、私だよ……)

ぐっと視線を上げて、ただ真っ直ぐに告げた。

『…義務で、春日局様を疲れさせてしまうのは本意ではないんです』
春日局「…義務?」

手首を掴まれていた手の力が僅かに弱まった瞬間、私はたまらず逃げるようにその場を後にした。庭園まで走ってくると、私は息を乱してその場にしゃがみこんだ。

(……私は、何をしてるんだろう。ただ…、春日局様の負担を減らしたかっただけなのに。もっと、違う伝え方があったかもしれないのに…)

今すぐに謝りに行きたい、だけど動けないでいると……

春日局「……手を煩わせるな」

聞きなれた優しい声とともに、身体をぎゅっと抱きすくめられた。

『……っ…』
春日局「…貴方はいつも言い逃げをする、私から逃げることは許さない」
『春日局様……』

すると、目の前にすっと書物が差し出される。

(……これ)

そこには、春日局様の端正な字で文字が書かれていた。

"…椿のいる場所を、知らせて欲しい"

抱きしめる腕の力がぎゅっと強くなった。

春日局「……この妙な書物も便利な物だな」
『………』
春日局「勝手に足が動いて、そこに貴方がいた」

春日局様は、肩を掴んで私の向きを変えると、瞳をじっと見つめる。その瞳の中には、ただ私の姿だけが映っていた。

春日局「椿、私にもう一つだけ言わせろ」
『…はい』
春日局「貴方への教育を、義務だと捉えられるのは本意ではない」
(あ……)

ーーーーーーーーーーーーーーー

『…義務で、春日局様を疲れさせてしまうのは本意ではないんです』
春日局「…義務?」

ーーーーーーーーーーーーーーー

春日局様はふっと目を細めると、額と額を優しく重ねて呟いた。

春日局「…よいか、貴方に教育をするのは私の根本に原因がある。私は、貴方を縛るために教育をしているのではと思う時があってな」
『それは……』
春日局「貴方が、上様らしくなればなる程に…貴方はここから離れられない」

その瞬間、榊さんの言葉が脳裏を過る。

ーーーーーーーーーーーーーーー

榊「春日局様が望まれているのは、幕府の繁栄。それと…上様がここに留まられることです」
『私が…ここに?』
榊「はい、春日局様は上様のそばで仕えていたいからこそ、教育をなさっているように………私には思えます」

ーーーーーーーーーーーーーーー

『…離れるわけがないじゃないですか…』
春日局「あぁ、分かっている」

春日局様は自嘲気味に笑うと、帯に手を触れさせてキッパリと告げた。

春日局「そんなに私たちの関係が脆くないことも。だが…いらぬ心配をするのが…想いの証だろう」

春日局様は、私の頬に手を添えて言葉を重ねる。

春日局「貴方が、私のことを心配してくれるようにな」
『……っ…』

言葉を返そうとしたその時、砂利を踏む音がして誰かが歩いてくる気配を感じる。

『春日局様、……誰かきます』
春日局「……こい」

引きずられるようにして、そのまま下駄を履いたまま転がるように春日局様の部屋に連れ込まれ、背中に柱が当たる。

『…春日局様、下駄のままで…床が汚れて…』

言いかけた言葉を塞ぐように、腰を引き寄せられて春日局様の熱い吐息が首にかかる。

春日局「…今は、そんなこと構わない」
『……っ…』

春日局様は深く息を吐くと、私の胸に額を押し付けた。

春日局「私は今まで何一つ欲しいものなどなかった。…それに、すべて意のままに、思い通りに人を動かしてきた」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

春日局「…小まめに貴方を補充しないと身がもたないと言っている」
『…っ…人を燃料のように扱うのはやめてください…』
春日局「…本当に貴方は、意のままにならないな」

ーーーーーーーーーーーーーーーー

(春日局様の無意識の言葉は…本心だったの?)

ぐっと胸に重さを感じて、私はそっと春日局様の髪に手を伸ばす。

春日局「けれど…欲しい人に、椿…貴方に出会ってしまった」
『はい…』
春日局「どうして貴方を手放せる…?」

溢れさせた言葉に、私はただただぎゅっとその大きな背中を抱きしめた。

(……私は、このお方の何を見ていたんだろう。独りよがりに、決めつけていたのは私だ…)
『春日局様…聞いてください』

視線が重なった瞬間に、私は手許に転がっていた書物を春日局様の目の前に広げて見せた。

『こんな書物を使ってしまうほど自分が愚かだと思うほどに…私も春日局様を手放せません』
春日局「……そう、か」

春日局様はふっと笑うと、そこに並んでいる文字を眺めて笑う。

春日局「…本当に愚かだな」
『はい…』

頷くと、春日局様は緩く首を振って髪をすっと指先でといた。

春日局「貴方も…。そして、それ以上に私もだ」

お互い交わした視線から、同じだけの思いが流れ込んできて、どこからともなく唇を重ねながらその場に倒れこむ。

『……っ…ぁ…っ…』

幾度となく唇を重ねるたびに、水音が響いて煽られていく。

春日局「……本当に、貴方は困った人だ」

薄く笑い、首筋をくすぐるように唇が辿る。

春日局「……貴方に首輪でもつけてしまおうか」
『…そんな物騒なものはつけられません』
春日局「冗談に決まっているだろう」
(だけど、春日局様になら私は…)

私は手さぐりで書物を探すと、春日局様に差し出した。

『…だから、これで私を思い通り…好きにしてください』

春日局様は私の片方だけ履いていた下駄と、書物を床に投げ捨てて口の端を持ち上げた。

春日局「…こんなものは必要無い」
『……っ……』
春日局「貴方は私の思い通りなのだから…」

そのまま春日局様は私の片足を抱え上げ、甘い指先を滑らせた…




なんというSM(笑)春日局様ルートはやっぱこうなるよねぇ、時々は影武者ちゃんが有利に終わるっていう状況も見てみたかったり…。半年以上続きをレポートしてなかったけど、ようやくひめごとEND迎えることができました。


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2016/05/13 (Fri) 【第2話】春日局【私の思い通り】

初めましての方は初めまして。
ARUSEBU、もしくは椿と椛と言います。
2015年の11月から12月にかけて開催された私の思い通りイベント、春日局様ルートの第2話になります。ではお楽しみください。


春日局「さあ…、これを引かねばな」

その腕に抱えられている物を見て、私は目を疑った。

(……褥…!?)

立ち尽くす私を他所に、てきぱきとその場に褥の準備がされている。

(どういうこと……)

春日局様は満足げに褥に腰を下ろすと、ぐっと私の手首を引き寄せる。

『春日局さ…ま…っ……!!』

倒れかかった体を、抱きすくめられうようにして横になる。

(……っ……ー!!)

褥に横にされて、一気に心臓が音を立てた。

(もしかして……)

春日局様の唇が耳に触れた瞬間、ぽつりと気だるい声が注がれた。

春日局「………私は、眠い」
『え……?』

私をぎゅうっと抱きしめながら、春日局様は広い胸に私を押し付けた。

(………っ…)
春日局「少し肌寒いな、一緒に寝ろ」
『私も一緒にですか?』
春日局「ああ、……貴方が暖かいからちょうどいい」
(……こんな春日局様の姿、初めて見る)

耳をくすぐるその一言一言に動揺していると、春日局様が深くため息をついた。

春日局「それに……もたない」
(もたない……?)

かすれるような声でまた言葉が紡がれる。

春日局「…こまめに貴方を補充しないと身がもたないと言っている」
『…っ…人を燃料のように扱うのはやめてください…』
春日局「…本当に貴方は、意のままにならないな」

気が緩んでいるのか、いつもより甘い声が耳をくすぐる。

(この春日局様が、本当の春日局様なのかな……)

それはわからないけれど、これが全て書物のせいだとはどうしても思えない。私のすぐそばで横になった表情には疲れの色が見えて、私は数日前のことを思い出していた………

ーーーーーーーーーーーーーーー

それは深い夜が辺りを包む刻

『こんな遅くまで、お仕事をされているのですか?』
春日局「ああ、これがないと家臣たちが明日、困るだろう」

春日局様は手にした書状をまとめながら、私の顔を見てふっと笑みを溢し頬杖をついた。

春日局「そんなお預けをくらった子犬のような顔をするな」
『…っ……!』
春日局「あとで存分に可愛がってやる」

ーーーーーーーーーーーーーーー

(…私は、あの時、構って欲しかったわけじゃない。ただ……春日局様のお身体が心配だったんだ)

そっと神に手を伸ばすと、春日局様は記憶と同じような顔で笑った。

春日局「…なんだ、くすぐったい」

春日局様の髪は柔らかくて、心までくすぐられるようだ。

(だからこそ…私が手を煩わせたくはない)
『春日局様、もう今日は少し休んでください』
春日局「……何を言っている」
『なんだか、…春日局様をみていると、たまに苦しくなります』
春日局「病気でもしたのか」
『違いますよ』

春日局様の目元がふっと緩むのがわかる。

『こうしてたまには昼間に横になってみたり、たまには……、甘えてください』
(この言葉を伝えても、春日局様には届いてないかもしれないけれど)

視線を伏せると、耳飾りにすっと手が触れた。

春日局「私は、貴方には十分甘えているがな」
『え?』
春日局「上様の任を、任せているのだから」
(……っ)

その言葉に、義務というふた文字が頭をかすめて胸がくっと詰まる。

春日局「…そろそろ大名との謁見だったな」
(…どうして、すべての任務から解放されるって書いたのに)

視界の端で、書物を捉えると春日局様がぽつりと呟いた。

春日局「休みたいものだが…、貴方が行くのなら行かねばな」
(………っ…)

その言葉に、私は身体を起こすと衝動に任せて筆を走らせていた…

春日局「……なんだ…これは……」

筆を置くと、春日局様の瞼がゆっくりと降りて、しばらくすると穏やかな寝息が聞こえてきた。

(……今日だけ、だから)

"…春日局様は、謁見が終わるまで眠っている"

私はその場に書物を置いて、広間へと向かった…。

ーーーーーーーーーーーーーーー

…そして大名の方々との謁見は進み、

大名「…なるほど、上様のご意向はしかと受け取りました」
『ああ…、頼んだぞ。皆の者』
大名「はっ…」

つつがなく謁見が終わると、大名の方々は続々と広間を後にする。ふっと安堵の息をもらすと、見守ってくれた稲葉が声をかけてくれた。

稲葉「春日局様のお姿が見えませんが…」
(あ……その…)
『体調がすぐれないって、部屋でお休みになられてるよ』
稲葉「そうですか…しかし、たまにお休みになられるという意味では良かったかもしれませんね」

稲葉は不謹慎ですが、と付け加えて柔らかく笑い言葉を重ねた。

稲葉「椿様、お一人でご立派でした」
『……うん、ありがとう』

立ち去る稲葉の背中を見つめていると、背後から声が掛けられた。

榊「上様…少しお話をさせて頂いても宜しいでしょうか」

ーーーーーーーーーーーーーーー

(榊さん、どうしたんだろう……)
榊「…………」

広間で声をかけてきたのは、榊さんだった。空き和室に入ると、榊さんは表情を崩すことなく口にした。

榊「春日局様は、上様の手であの書物の術にかかっているのではないですか」
(……っ…)

私が息を呑むと、榊さんは視線を逸らしたまま言葉を重ねていく。

榊「申し訳ありません…。先ほどあの書物を預かった際に座学が早く終わればと書かれていたのを見てしまいました」
(……もしかして影武者だと…)

身を固くすると、榊さんの低い声が聞こえてくる。

榊「最近の上様は、…真剣に座学を学んでいらっしゃるようにお見受けしておりましたので」
(……榊さんは、鋭い)

その真摯な瞳につられるようにして、私は自然と胸の内を口にしていた。

『長年この地位にいる、それなのに春日局の手を煩わせてばかりだ』
榊「………」
『時に思う、…義務で私に教育を続けているのではないかと』

ーーーーーーーーーーーーーーー

家臣「春日局様はお忙しいのに、上様のご教育には余念がないな…」

ーーーーーーーーーーーーーーー

『だから、たまにはその責務から解放したかっただけだ』

榊さんはじっと逡巡するような表情を浮かべた後、はっきりとした声で告げた。

榊「上様は思い違いをなさっています」
(………思い違い…?)
榊「春日局様が望まれているのは、幕府の繁栄。それと…上様がここに留まられることです」
『私が…ここに?』
榊「はい、春日局様は上様のそばで支えていたいからこそ。教育をなさっているように……私には思えます」

榊さんの口から溢される言葉に、上手く言葉が継げないでいると榊さんはすっと立ち上がった。

(……?)
榊「……出過ぎたことを申しました。お許しを」

そのまま頭を下げて、榊さんは立ち去っていく。いつまでも心の中に留まる言葉を反芻して、

ーーーーーーーーーーーーーーー

私もその部屋を後にして春日局様の部屋へと向かった……。春日局様の部屋に足を踏み入れると…

春日局「……これはどういうことだ」
『……っ…春日局様』

"…春日局様は、謁見が終わるまで眠っている"

目を覚ました春日局様が書物に視線を向けて、複雑そうな表情を浮かべていた。私が立ち尽くしていると、春日局様は私の腕をぐっと引き寄せて囁いた…

春日局「心意を聞きたい。…貴方自身の口から」




榊に向き合う影武者の態度がかっこいいというか。
偽物だと気付かれてはいけないのに、少しの不安から言葉を紡いでいる時の影武者ちゃんの姿が好きです。弱音じゃないけど、グッときました。
あと書物を春日局様のお部屋に置いておくなんて、天然なのかな。でも、バレて迫られるそのシーン…どきどきしますぜ←
ではまた次の更新まで少々お待ちください。

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2015/11/26 (Thu) 【第1話】春日局【私の思い通り】

こんばんわ!ARUSEBUこと椿ともうします。
いやぁ、旧奥の3周年イベント始まりましたねぇ。私は新奥から始めましたが、正直、旧奥のメインシナリオも販売して欲しいです…。ドラマCDも購入いたしましたが、文字で読みたいし、その頃は一人のお相手でもENDが二つ存在したとか聞いてるので気になる…!!
最近始まった3周年イベントでも、春日局様の後日談購入致しました。ただ先日の永光さんの誕生日シナリオのセット購入しちゃったので、ちょっとお金使いすぎですね。自重しなければ…また今度12月5日から旧奥関連の販売が開始するのでまた悪魔の囁きが!!まぁ実を言うと今回はその旧奥関連の販売物が私のお目当てなので、少しの出費は身構えてます。。
では長いこと話しましたが、3周年イベントのレポやってきますよ!名前は「椿」です。


…地面に落ち葉が散る頃。

私は、書庫に落ちていた書物を見つめ一人首を傾げていた。

(……これは、誰のものでもなさそうだな)

歩きながらパラパラと髪をめくっていっても、誰の筆跡もかかれていない。

(榊さんなら、分かるかもしれない)

榊さんの部屋へ向かおうと、歩く方向を変えたその時……

『……っ…!!』

とん、と誰かの胸にぶつかってゆっくり視線をあげるとそこには、

春日局「書物を歩きながら読む作法は躾けていないのだが…?」
『春日局様…!』

私を見下ろす春日局様の姿があった。その姿を見た瞬間、私は思わずはっと息を呑んだ。

(……この後、春日局様の座学の講義だった)
春日局「ほう…、その顔は思い出したようだな」
『はい…』

項垂れると、その途端春日局様の口調ががらりと変わる。

春日局「上様はお忙しい、お声がけをしなかった私にも非があります」
(え……?)

視線を上げると、近くには家臣の方々が歩いてくるところだった。春日局様は、ふっと息をつくと私の耳元で低く囁いた…。

春日局「いつもより時間をかけて教育して差し上げよう」
(う……)

春日局様は楽しげに瞳を揺らすと、すっと姿勢を正す。

春日局「さあ、上様参りましょうか」
(……今日の座学は、きっと途方もなく長くなる)

予感にも似た確信を覚えながら、私は春日局様に促されて足を踏み出す。背後からは家臣達が小声で話す声が聞こえてきていた。

家臣「春日局様はお忙しいのに、上様のご教育には余念がないな…」

ーーーーーーーーーーーーーーー

春日局「この時を納めている大名は……」

二人きりで講義をしてくださる春日局様の声に耳を傾けながら不意に思う。

(影武者の人を受けてから、もうかなりの歳月が流れたな…。私もある程度上様としての知識は身につけたはずなんだけど)

こうして、定期的に私は春日局様から座学を受けていた。その時、ふと家臣の方々の声を思い出す。

ーーーーーーーーーーーーーーー

家臣「春日局様はお忙しいのに、上様のご教育には余念がないな…」

ーーーーーーーーーーーーーーー

忙しい、その言葉だけが頭の胸にずっと留まっている。

(…私はまだ春日局様にとって、そんなに頼りない存在なのかな。それとも…この教育は、春日局様の義務の一つなのかもしれない)
春日局「椿…聴いているのか」
『あ…はい』

私は慌てて頷くと、さっき手にしていた書物を取り出して一瞬躊躇する。

(…この書物、誰のものでもなさそうだし使っていいよね)

筆をとりながら、忙しい春日局様ご自身のためにも早くこの座学を終わらせたい。そんなことを考えながら、ぼんやりと筆を走らせた。

"座学、早く終わらないかな"

筆を置いたその時、ぱたんと書物が閉じられる音がした…。

春日局「……飽きたな。こんなつまらぬ話はやめだ」
(…………え?)

耳を疑う言葉に目を見開くと、春日局様は粗雑に書物を机上に置いた。

『あの…座学はまだ始まったばかりで…』
春日局「あなたも飽きている」
(それは、そうだけど……)
春日局「そして……。私も飽きたのだ」
『へ……?』

信じられない言葉に、思わず間抜けな声を出すと、春日局が当然だとでも言いたげに言い放つ。

春日局「何か異論でも?」
『いえ……』
(いつもの春日局様なら……)

ーーーーーーーーーーーーーーー

春日局「どうした、もう音をあげるのか…?まだまだ教育は、始まったばかりなのだからな」

ーーーーーーーーーーーーーーー

(それなのに、今日の春日局様は仰っていることが滅茶苦茶だ…)
春日局「何だ、まだ何か教えて欲しそうな顔をしているな…」

薄い笑みが聞こえてきて、扇でくいっと顎を持ち上げられる。

(……っ…!!)
春日局「座学以外のことなら教えて差し上げるが…?」
『座学、以外とはなんですか?』

春日局様は扇で顎を掬い上げたまま、すっと顔を近づける。

春日局「こういう教育の方が、ずっと面白いはずだが」

扇で顎から外された瞬間、唇を奪われて髪をくしゃりと撫でられる。

(……っ……)
春日局「…ほら、ちゃんと覚えろ。私の口づけの仕方を」
『…ん…ふ……、ぅ…』

散々舌を弄ばれると、唇が離れて春日局様は不敵に微笑んだ。

春日局「こういう座学が好みなら、講義の内容を検討する必要があるな」
『……し、失礼します…!』

思わず気が動転した私は、書物を抱え春日局様の部屋を飛び出す。

(……突然、春日局様のご様子がおかしくなった)

抱えている書物に視線を落として、眉根を寄せた……

(もしかして……)

私は書物を抱え、御右筆の榊さんの部屋を訪れていた。

榊「…………」

榊さんはまじまじと書物を眺めると、低い淡々とした声で告げる。

榊「長年、あの書庫の管理を任されていますが、見たことがない書物です」
『そうか』
(榊さんでもわからないなら、もうお手上げだよ……)

その時、榊さんが筆を取りぽつりと呟いた。

榊「…少し確かめさせていただいてもよろしいでしょうか」

榊さんが謎の書物に筆を走らせたその瞬間……

(……っ…!!!)

大きな音をたてて、積まれていた書状がばさばさと床に落ちる。

『…榊、これはどういうことだ』

榊さんは至極真面目な表情で、私の前にすっと書物を差し出した。

(これ……)

"私、榊の私室の書状が床に散らばる"

その一文が、私の書いた文字の下に添えられていた。

榊「これは、書いたことが思い通りになる術…のようなものがかけられています。そう、直感的に感じました」

その瞬間、書庫から出た時に背後から聞こえてきた声がふっと蘇る。

ーーーーーーーーーーーーーーー

御門「あー…あ、まんまと持って行っちゃった」

ーーーーーーーーーーーーーーー

(書いたことが思い通りになる術…、きっと御門だ)
榊「どうしますか、これは危険な代物です」
『危険?』
榊「不用意な使い方をすれば、大変な被害が起きる可能性があるかと」

榊さんに預けよう、そう思ったその時、ある思いに心が動かされる。

(これがあれば…、春日局様を休ませてあげることが出来る。それに、私の教育っていう義務からも解かれるかもしれないんだ…)

気がつくと、私は自然とその書物に手を伸ばしていた……

『榊、これを私に預からせてくれないか』

ーーーーーーーーーーーーーーー

榊さんの元を去ると、春日局様の部屋の前で大きく息をつく。

(……本当は、いけないことだとわかってはいるけれど)

私は緩く首を振ると、書物を抱えなおして春日局様の部屋の襖を開けた……

春日局「…どうかしたのか」

部屋に足を踏み入れると、そこには書状をまとめている姿がある。その書状は、上様…私がこなさなければならない物も含まれていた。

春日局「用件は手短にな」

視線を伏せたまま、手を動かす春日局様を見つめると、胸がぎゅっと締め付けられる。

(……忙しい公務からも。そして何より、私を教育しないといけない義務からも解放されて欲しい…)

私は春日局様が書状に気を取られているすきに、一気に筆を走らせる。

"全ての任務から解放される春日局様になって欲しい"

(……これで)
春日局「……っ…!!」

その瞬間、春日局様は手にしていた書状を放り投げて息をつく。

春日局「……書状の整理など、後回しだ」

すくっとその場から立ち上がると、どこかに向かってすたすたと歩いていく。

『か…春日局様?』

物凄い勢いで押し入れを開けると、春日局様は何かを取り出して私に向かって歩いてくる。

『………っ…』
春日局「さあ…、これを引かなければな」

その腕に抱えられている物を見て、私は目を疑った。

(……褥…!?)



"瞬間、春日局様は手にしていた書状を放り投げて"
この部分、頭の中ではぽっぽーいってポップな感じに解釈してしまい少し笑ってしまった。
ていうか、影武者ちゃんが可愛すぎて悶絶!!自分の事が春日局様の重荷になっているなんて、私だったら考えられない。ていうか寧ろ、春日局様と一緒に居れてもっと講義増えないかなぁとか…まぁ勉強は嫌いなんだけど。っていうか春日局様ルート読んでいるといつも思うけど、私だったら勉強の結果とかで落胆させること間違い無し…。いくら努力しても知能には限界あるし…、勉強よりも放浪して人に悪戯してたような悪ガキだったから…(←なんという家光様)

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2015/11/26 (Thu) 【スイートEND】豊臣秀吉【私だけの戦国武将】

お久しぶりです。ARUSEBUこと椿です。
年末年始近づいてきましたねぇ、もう12月ですし…ただまだ12月のような寒さでは無さそうですね。雪なんかは程遠そうな寒さで。忘年会シーズンになってきましたが皆様はいかがお過ごしでしょうか。
私は風邪で数日間寝込んでいました←
皆様も風邪にはお気をつけください。ではでは今日も私だけの戦国武将レポ、秀吉さんのスイートENDです。
名前は「椿」。


秀吉「なんでお前がここにいるかは知らないが……」

険しい顔で六助を睨み据え、秀吉さんが私の方をぐっと抱き寄せた。

(あ……っ)
秀吉「椿に、勝手に触れんじゃねぇ」
『秀吉さん…』

小さく呼ぶと、秀吉さんは視線は六助から外さないまま、腕に一層力を込める。

秀吉「…大丈夫だから、ちょっとまってろ」
(っ……)

ウナ元に押し付けられるように抱きしめられて、不安が一気に吹き飛んでいく。

六助「気に入らねえなぁ…」

緊迫した空気が濃くなり、秀吉さんは私の耳にそっと囁く。

秀吉「…下がってろ」
『え…?』

秀吉さんは、私をかばうように背中に隠し、腰の方なをすらりと抜きはなった。それに応えるように、六助も短刀を構える。

秀吉「この女に手を出したこと、今すぐ後悔させてやる。…行くぞ」

低い声が響いたのと同時に、秀吉さんの足が地を蹴った。

六助「く、っ」

重い一撃を六助は短刀でなんとか受けるが、押されるように後ずさる。

六助「この、野郎…っ!」

ガキン、という耳障りな金属音を立てて秀吉さんの刀が跳ね上がった。けれど、それはすぐに再び振り下ろされる。白刃が空気を裂いて音を立てる。

六助「ぐっ…!」
(す、すごい……)

秀吉さんの動きは、豪快なのに隙などどこにもない。私の目から見ても、二人の実力の差は歴然としていた。

(秀吉さん…)

型にはまらない秀吉さんの動きは、まるで勇壮な踊りを舞っているように見える。

六助「っ、くそ!」

焦れたように、六助が短刀をがむしゃらに振り回す。迎え撃つ秀吉さんの刀が、傾きかけた夕日の茜色を弾いて、ひときわきらめいた。

秀吉「…終わりだ」

斜め下から振り上げられた秀吉さんの刀が、六助の手元を打ってその短刀が宙に飛ぶ。

六助「ぐ…っ」

その場に崩れ落ちた六助の鼻先に、秀吉さんが刀の切っ先を突きつけた。

(っ……息するの、忘れてた……)

森が静まり返り、私はようやく息をついた。

秀吉「く、くそ……っ」

悔しげに吐き捨てた六助は、すぐにその口元をいやしげに歪める。

六助「っ……うつけの犬にしては、やるじゃねえか、秀吉」

けれど、秀吉さんは冷たい目で相手を見下ろしたまま表情を動かさない。

秀吉「昔のよしみだ、二度と顔を出さないなら見逃してやる」
六助「くっ……」

顔を歪めた六助が、秀吉さんの後ろにいた私の方へと視線を向けてきた。

(な、何…?)
六助「…そんなに、この女が大事か」
秀吉「…なに?」
六助「あいつに血を見せたくないとでも言うつもりか?」
(え……?)
秀吉「…お前には関係無い」

低く呟いた秀吉さんが、刀を握りなおす。

秀吉「お前も知ってるだろ。俺は気が長いわけじゃない。もう一度言うぞ。さっさと失せろ」
(っ…いつもと、別人みたいだ)

秀吉さんの眼光に押され、六助が震えながら立ち上がる。

六助「…お優しいことだ。偉くなったらしいが、せいぜいボロが出ないように気をつけるんだな」

吐き捨てるように言った六助は、そのまま話の奥へと走り去っていった。

(っ……助かった……)
秀吉「……」

秀吉さんは、無言のまま刀を一度振ってから鞘へと納めた。その横顔は、まだ険しいままだ。

(昔の知り合いに会ったせい、なのかな……)

何も言わず、六助の去った藪の方を見つめている秀吉さんの姿に、胸がざわつく。

(やっぱり、秀吉さんにとって過去は、触れられたくないタブーなのかもしれない……)

そんなことを思いながらも、私は気を奮い立たせて口を開く。

『…秀吉さん』
秀吉「……ん」

秀吉さんは、その表情から険しさを消して振り返る。

秀吉「…巻き込んで悪かった、椿」

暖かい笑みを浮かべるその顔に、なぜか胸がきゅうと締め付けられた。

『そんなこと…』
(私があの人にさらわれたのが悪いのに。そのせいで秀吉さんが苦しい思いをしたのに……)

何か言葉を返したいと思うのに、うまく声が出てこない。そんな私の肩を、秀吉さんがそっと押した。

秀吉「帰ろう、椿」

ーーーーーーーーーーーーーーー




秀吉「よく来たな」
『お邪魔します……』

数日後、私は秀吉さんの後殿へと招かれていた。部屋で向かい合いながら、落ち着かない沈黙に包まれる。

(「怖い目にあわせた詫びをしたい」って言われて招いてもらったけど…。お礼とかお詫びとか、したいのは私の方なんだけどな…)

振舞われたお茶をゆっくりと喉に落としながら、私はそわそわと言葉を探した。

秀吉「椿」

気まずい沈黙を破ったのは秀吉さんの方だった。

『…うん?』
秀吉「この前は、済まなかった。俺の責任だ」
『違うよ!私が…』

否定しようとするけれど、秀吉さんがゆっくりと首を振ってそれを遮る。

秀吉「つまらない話だけど、俺の昔の話、聞きたいか?」
『え…?』
秀吉「あいつ…六助との出会いとか、俺がどんな生まれの人間か、とか」
『それは……』
(聞きたくないって言ったら嘘になる。明かされていない歴史の謎の一つだし……。でも……)

秀吉さんは静かな瞳で、じっと私を見つめている。穏やかな表情だけれど、本当は秀吉さんが話したくないと思っているのがなんとなくわかった。

(無理に、話して欲しくない。だったら、出自の話より…。私には、他にもっと、知りたいことがある)
『それなら、秀吉さんがどんな子どもだったか、聞かせて?』
秀吉「え?」
『転んだ子供を助けた時に言ってたでしょ?俺も悪ガキだったって』
秀吉「…ああ」
『想像つかないから聞いてみたいな』
秀吉「椿……」

秀吉さんは、私の顔をじっと見つめてから、ふっと微笑んだ。

秀吉「わかった。教えてやる。他のやつには内緒だぞ?」
『うん!』
秀吉「そうだなぁ…とにかく、悪戯をたくさんしたな。言った通り、筋金入りの悪ガキだったよ。周りの奴らを先導して悪さすんだから、大人からしてみれば厄介なガキだったろうな」
『昔から、面倒見がよかったってことだね』
秀吉「そんないいもんじゃない。ただのガキ大将だ」

笑う秀吉さんを見ながら、私もお茶を口につける。さっきはあまり味も分からなかったそれが、とても美味しく思えた。

『……嬉しいな』
秀吉「ん?」
『知らなかった秀吉さんのこと知れて、嬉しい』
秀吉「…そうか」

出自とか歴史の謎とか、そういうことじゃなくて…。今目の前にいる、秀吉さんの子供の頃のことを知ることが出来たのが嬉しかった。

(もっと知りたいな、秀吉さんのこと……)
秀吉「…お前は優しいんだな。それに大人だ」
『…そんなことないよ』
秀吉「あるだろ」
(気づかれてるかな…。秀吉さんが話したくなさそうだったことから、話題そらしたこと)

それでも何も言わず、こうして話をしてくれた秀吉さんの方が優しくて大人だと思う。そんなことを考えていると、大きな手のひらが、ゆっくりと私に近づいて……

秀吉「お前のことを見くびってた。妹同然だなんて、もう言えないな」
『え……?』

伸びてきた秀吉さんの手がそっと私の頭に触れ、優しく撫でた。

(っ…なんか、いつもと、違う…)

くしゃくしゃと頭を撫で、子供をあやすような手つきとは、何かが違う。甘い心地を導き出されて、鼓動が早くなっていく。

『今の、どういう意味か、聞いてもいい……?』
(妹同然だなんて、言えないって………)
秀吉「駄目だ」
『えっ?』
秀吉「お前は、これからも俺に甘やかされるってことだけ、わかってればいい」
(そんなの……ずるいよ)

目を細めるようにして微笑む秀吉さんの表情は、どこか色気を孕んでいて、私の胸は一層大きく鳴る。

(どうしよう…なんだか胸が苦しい……)

恥ずかしいのに目を逸らすことはできなくて、私たちは静かに見つめ合った。

(過去は謎のままだけれど、もっと知りたい謎が出来た。秀吉さんが私をどう思ってるか……今はそれが、すごく知りたい)

秀吉さんの指は、まるで慈しむように私の髪を梳いていく。じっとそれを受けながら……二人の間の何かが変わる予感が、私の胸に、確かに広がっていった。


まだ本編配信してないお相手ってやっぱりこういう甘いENDになりますよね〜。キスなんかはもっぱらないですし、でも個人的にこういうのんびりENDも好きなので…というより秀吉さん自身が好きなので←
スイートENDが過去を明かさなかったということは、プレミアでは過去明かしあるのかなぁ(・∀・)期待!

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2015/11/20 (Fri) 【第2話】豊臣秀吉【私だけの戦国武将】

遅くなりましたが、私だけの戦国武将イベの豊臣秀吉、第2話。
名前は「椿」です。


翌日。

秀吉「椿、今、時間あるか?」
『うん、大丈夫だよ。昨日の話だよね』

私は、部屋を訪れた秀吉さんを部屋へと迎え入れた。

(頼みがあるって、言ってたけど…)

秀吉「お前に、見舞いに付き合って欲しいんだ」
『お見舞い?』
秀吉「ああ。今回の戦で、怪我したやつがいてな。その見舞いについてきてくれないか?」
『もちろん構わないけど……秀吉さんだけじゃ、行けない理由でもあるの?』
秀吉「男一人で見舞いに来られても、むさ苦しいだけだろ」
『そういうもの?』
(その家臣は、秀吉さんが来てくれるだけで嬉しいと思うけど…)

それでも、秀吉さんが私を頼ってくれたことがなんだか嬉しかった。

秀吉「知り合いの町娘の誰かに頼んでも良かったんだが…」
(あ、そうか)

どうして街の女の子に同行をお願いしなかったのかは、秀吉さんの困り顏でピンときた。

『頼まれなかった子がしょんぼりしちゃいそうだね。それだと』

図星だったらしく、秀吉さんは苦い顔で頷く。

秀吉「前に、もめたことがあるんだ。嫌な思いはさせたくないからな。でも、椿は俺にとって妹みたいなものだから…」
『…うん?』
秀吉「連れて行くのが椿なら、ややこしいことにはならないだろ?」
『なるほど……』
(まぁ、確かに…普段の私たちって兄妹みたいな感じだよね。だけど…)

同意しつつも、どこかもやもやした気持ちが胸の内に広がる。

秀吉「急な頼みで悪いけど、一緒に来てくれないか?」
『…うん、いいよ。一緒に行こう』
秀吉「そうか!ありがとな」

ぱっと笑顔になる秀吉さんに、私も微笑み返す。

(妹かぁ……)

秀吉さんが、私のことを家族のように思ってくれることは嬉しい。

(嬉しい、はずなんだけど……)

なぜか心は晴れなくて、その理由もよく分からない。自分が自分でわからなくなり、黙り込んでいると…

秀吉「おい、椿?」
(あ……)

心配そうな秀吉さんの顔が、間近に迫る。

秀吉「急にどうしたんだ?そんな顔して」
『な、なんでもないよ!それより早く行こう?』
秀吉「本当か?もし具合が悪いならすぐに…」
『平気平気!心配しすぎだよ』
(ケガした人のお見舞いに出かけるのに、私の心配をさせてる場合じゃないよね)

私はすっきりとしない気持ちを振り払い、秀吉さんの背中をぐいぐい押して部屋を出た。

ーーーーーーーーーーーーーーー

『ケガした人、すぐに良くなりそうで良かったね』
秀吉「ああそうだな。元気そうで安心したよ」

お見舞いを終えた私たちは、夕暮れの城下町を並んで歩いていた。秀吉さんはほっとしたように笑みを深めている。

(本当に、家臣の人たちのことを大事に思ってるんだな)

秀吉さんのこういう部分が皆の人望を集めるのだろうと思うと、胸が温かくなる。

秀吉「椿も来てくれてありがとうな。お前が来てくれて良かった」
『ううん。私は何にも…』

少し照れくさくて、目を伏せて首を振ったその時。

子供1「わーい!」
子供2「あ、待てよー!」

賑やかな声が耳に届いて顔を上げると、元気よく走ってくる子供たちが見えた。

(ふふ、元気だな)

微笑ましい気持ちで眺めていると、そのうちの一人が、地元に躓いてしまう。

子供1「わっ」
『あ、危ないっ!』

反射的に伸ばした手は間に合わず、男の子は私たちの数歩先でべしゃっと転んでしまった。

子供1「う……っ」
秀吉「おい、大丈夫か」

秀吉さんが、素早く駆け寄って男の子を抱え起こす。

子供1「…うぅ……」
秀吉「どっか痛いか?」
子供1「別に…痛くねーよ…っ」

男の子はそう言いながらも、大きな目に涙を浮かべていた。

秀吉「ケガは……なさそうだな」

秀吉さんは、大きな手で男の子の着物についた砂をそっと払う。

秀吉「平気か?」
子供1「平気だよ、こんくらい」

男の子は、小さな拳でぎゅっと目元をこすった。

秀吉「そうか、えらいな」

秀吉さんは微笑み、あやすように男の子の頭をわしゃわしゃとかき混ぜた。

(秀吉さん、子供をあやすの手馴れてる…。さすが世話焼き)

子供1「ガキ扱いすんなよな!」

秀吉さんの手から逃げるように頭を振った男の子は、再び元気に駆け出す。そして、少し離れたところで振り返った。

子供1「ありがと!」

そう叫び、走り去っていく小さな背中を眺めて秀吉さんが微笑む。

秀吉「ったく。口の悪いガキだな」
『とか言いながら、楽しそうな顔してるよ』
秀吉「まあ俺も、ガキの頃はあんなふうだったからな」
『え…?』
秀吉「いや……」

はっとして口をつぐんだ秀吉さんは、どこか困ったように笑った。

秀吉「何でもない」
(話したくないのかな…)
『……うん。そっか』
秀吉「……」

なんとなくしんみりした空気になってしまい、私たちは黙ったまま歩き出す。

(やっぱり、秀吉さんにとって過去の話は、触れられたくないものなのかも…)

考え込んで、地面を見つめながら歩いていると、

『きゃっ!?』

不意に何かに足を取られたように、がくんと身体が傾いた。

秀吉「おい!」

とっさに伸びてきた秀吉さんの腕が、私の背中をすかさず支えてくれる。

秀吉「どうした急に…って、草履か」
『え…?あ、鼻緒が…』

見下ろした先で、片方の草履の鼻緒が切れてしまっていた。

『わ…どうしよう』

慌てる私をよそに、秀吉さんはすっとその場に膝をついた。

秀吉「ちょっと待ってろ」
『え…?』

私の前に跪いた秀吉さんは、私の足を支えながら懐から手ぬぐいを取り出す。

秀吉「椿、ここに足乗せてろ」
『う、うん』

秀吉さんの手がかすかに足に触れ、少し鼓動が速くなる。

秀吉「すぐに直すから、じっとしてろよ?」
『ありがとう…』
(こういうところ、すごくスマートなんだよね…。女の子たちに人気があるのもわかるなぁ…)
秀吉「…はい終わり」

秀吉さんは、あっという間に鼻緒の修繕を終え、私に草履を履かせ直してくれた。

秀吉「きつくないか?」
『…うん。大丈夫みたい』

私がしっかりと足をついたのを確認して、秀吉さんは立ち上がった。

秀吉「手間がかかるな、お前は」
『ありがとう。ごめんなさい…』
(迷惑かけちゃったな……。これじゃ、ほんとに秀吉さんの妹だ)

心がしぼんで、申し訳なさが胸に広がる。

秀吉「こーら、そんな顔するな、椿。俺は、お前の面倒見るの、嫌いじゃないんだ」

秀吉さんは、優しい表情のまま笑みを深め、すっとこちらへ手を伸ばしてきた。

(あ…)

大きな手で、私の頭にぽんと触れた。

(優しい、手……)

きゅっと胸が詰まって言葉が出てこない。けれど…

秀吉「本当に妹でもできたみたいだ」
(あ……やっぱり妹、か…)

秀吉さんは、そのままくしゃくしゃと私の髪をかき混ぜた。

(これ、さっき転んだ男の子にしてたのと同じ手つきだ…)

ときめいた胸がしおれ、もやもやとした気持ちが広がっていく。

秀吉「ん?どうした?」

私の様子に気がついたのか、秀吉さんが手を止めて顔を覗き込んだ。

(ちょ、近い…!)
秀吉「顔が赤いな、熱でもあるのか?」
『いや、えっと…!』
秀吉「そういや今朝も、ちょっと元気がなかったもんな」

険しい表情の秀吉さんの額が、私の額にこつんとぶつかった。

『っ……!』
秀吉「そんなに熱くはなさそうだけど…」
『だ、大丈夫だから…!』

私は、慌てて身を引いて秀吉さんから離れる。

秀吉「いや、大丈夫そうには見えないぞ。駕籠(かご)を呼んで帰るか」
『そんな、そこまでしなくても…』
秀吉「ちょっと呼んでくるから、ここで待ってろ。すぐ戻るから、動くんじゃないぞ」
『え、秀吉さん、待って…!』
(行っちゃった…。なんか、本当に過保護なお兄ちゃんみたい。ありがたいし、嬉しいはずなのに、どうしてこんなにもやもやするんだろう…)

一人残された私は、着物の胸元をぎゅっと握りしめて俯いた。ほてった顔と心臓の鼓動をおさめていると、人が近づいてくる足音が聞こえてきた。

『秀吉さ……、あ』
男「悪いが、"秀吉さん"じゃあないんだ」

顔を上げた私の目に映ったのは、にやつく笑みを浮かべた商人風の男性だった。

(あっ、この人、昨日、城門で秀吉さんをうかがってた……?)
男「あんた、秀吉の知り合い…それも、安土城に住んでる女だな?俺と一緒に来てもらおうか」
(っ、どういうこと……!?)

とっさに後ずさりするけれど、腕を強い力で掴まれる。

『何をするんですか、離して……っ!』
男「うるせえ、大人しくしろ!」

抵抗も空しく、私はその場から引きずられるようにして連れ出されてしまった。

(秀吉さん!)

ーーーーーーーーーーーーーーー

男性が私を無理やり連れ込んだのは、ひと気のない林だった。

『いや!離してっ…!』
男「大人しくしてろって言ってるだろうが!」
(どうしよう…っ)

恐怖でその場にへたりこみそうになる足をなんとかふんばり、私は男を睨みつけた。

『あなた…一体誰なの!?』
男「俺は六助って名で……秀吉の野郎の昔の知り合いだよ。あいつが信長に出仕するよりも前の、な」
(秀吉さんの過去を知ってる人…?)

私は思わず、六助の顔をまじまじと見つめてしまった。

六助「その様子じゃ、あんた、昔のあいつのことは知らねぇんだな。興味、あんのか?」
『っ…そ、そうじゃありません!それより、どうして私をこんな場所に連れてきたんですかっ?』
六助「まあそう焦らずに話を聞け。俺は乱取りで奪ったもんを売りさばいて暮らしてるんだが…」
(乱取りって…確か、戦場で亡くなった武士たちから金目のものを奪ったりすること、だよね…?)

六助のにやついた顔を見据えながら、背筋に冷たいものが走る。

六助「つい先日も、いつもみたいに出物がないかと戦場をはってた。そこで……秀吉を見かけたんだ。偉そうに軍を率いていやがるから、あとをつけてみれば…」

六助は口ものを歪めて、嘲るように笑った。

六助「まさか、尾張の大うつけの犬になってるとはな」
(そんな言い方…!)
六助「ついてたぜ。あんた、あいつの女なんだろう?」
『え…?』
六助「あんたをダシに、あいつをゆすれば、しばらくは遊んで暮らせそうだ」
『そんなっ…!』
(そんなこと、させるわけにはいかない…!)
『っ、離して!』

六助の手から逃れようと、私は渾身の力で自分の腕を振り回した。

六助「暴れんじゃねぇ!この、アマ…っ!」

苛立たしげな声が響くのと同時に、六助が腕を振り上げる。

(殴られる……っ)

身をすくませた時…

秀吉「椿…!」
『あっ……』

駆け寄ってきた秀吉さんが、瞬く間に六助の腕を振り払った。

(秀吉さん、追いかけてきてくれたんだ……っ)
六助「っ…よう、久しぶりだな、秀吉」
秀吉「お前は……六助?」

秀吉さんは、一瞬目を見開いたあと、ぎゅっと眉を寄せ…

秀吉「なんでお前がここにいるかは知らないが……」

険しい顔で六助を睨み据え、私の方をぐっと抱き寄せた。

(あ……っ)
秀吉「椿に、勝手に触れんじゃねえ」



既に私だけの戦国武将イベント終わってしまっていますが(←いつの話だ)
信長様と秀吉さんの両END迎えられたので満足しています。最近、年末年始も近く少し多忙です。
また追い追いメモを残していこうとおもいます。



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Author:椿と椛
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Lv:70 ARUSEA(現在休止中)
職:スピリットダンサー

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